リレーを極める ③(ちょっと変わった種目)

さて、ここまでリレーの王道である4×100mリレーと、4×400mリレーについてお話させて頂きました。

今回は一風変わった?リレーのお話をさせて頂こうと思います。


まず、男女混合の4×400mリレー。Mixリレーとも呼ばれます。

五輪では東京大会から五輪正式種目となりましたが、競技自体は2015年頃から行われています。

(実はこの種目も一時的に日本記録を持っていました!すぐ抜かれましたが…笑)

男子2人、女子2人で走るのですが、なんと走順は自由で、男女の組み合わせはどのようにしても良いのです。

ですから当然男女が同じ走順で走ることがあり、かなり大差がついている状態でも男子選手が逆転できることもあるのです。

男子選手はさぞかし気持ちいいだろうなぁと思っています。

(女子選手からするとハッキリ言って悔しいです!笑)


男子と女子では走力が全く違うため、バトンパスは通常の4×400mリレーよりも難易度が上がります。

男子から女子に渡す時には、男子のスピードが速すぎていわゆる「ドン詰まり」状態になったり…

女子から男子に渡すときに男子が早いタイミングで出てしまうと、最悪届かず失格という事態になります。

まだまだ歴史の浅い種目なので、今後様々な戦略が生まれてくる可能性があります。

是非注目して欲しい種目です!


続けて…字だけ見ると「何それ?」と思うのが、「スウェーデンリレー」。

陸上競技の大会では、「100m+200m+300m+400mリレー」と表記されることが多いです。

つまり4種類の距離を4人の走者で繋ぐ、とびきり変わり種のリレーです。

その名の通りスウェーデン発祥のリレーだそうで、1910年代に人気があったのだとか。

中々見る機会の無いリレーではありますが、大きな大会ですと毎年平塚か小田原で行われている「実業団・学生対校陸上」で実施されていますね。

(元々速い選手の選抜チームであることと、開催する大会自体が少ないことから、日本最高記録も大体この大会で更新されています。)

図で表すとこんな感じです。

これでもまだ全然分からないと思うので説明させてください。

第1走者の100mの選手は、200mのスタート地点、第3コーナーからスタートします。

コーナーを走ることになるので、コーナーが不得手な選手はちょっと不利ですね。

第2走者は、第4コーナーからスタート。ここは、4×100mリレーのような、後ろを振り返らないバトンパスになります。

第3走者は、第2コーナーからスタート。意外とここが難しいのです。

4×100mリレーのようにガツンとスタートしてしまうと、200mを走ってきた選手にとっては非常に辛い展開が待っています。(最後、もう残っていない力を更に振り絞ることになります…)

バトンパスも、4×100mリレーのようにするか、4×400mリレーのようにするか、チームの作戦によって変わってきます。(ルール上はどちらでも大丈夫です)

そして、アンカーへ。ゴール地点でのバトンパスから1周まわってフィニッシュです。

300mという距離は意外と減速しないまま走ってこられてしまうので、4×400mリレーよりは早いタイミングで出る必要があります。

普段なかなか行われない種目という事もあり、お祭りっぽさがあって見る側としてはとても楽しい種目です。

ルールブックによると国際ルールでは走順も自由に変えられるとか…!?

とはいえ、各走者のスピード差を考えると結局この形に落ち着きそうな気もしますが、別の走順との対決というのも見てみたいですね!


更に注目すべき種目が、「ユニバーサルリレー」

こちらは、パラ種目限定のリレーとなります。

パラリンピックでは、日本代表チームが見事銅メダルを獲得しましたね!

どういった種目かというと、「視覚障害」「切断・機能障害(立位)」「脳性まひ(立位)」「車椅子」のカテゴリ順に、男女2名ずつで400mをリレーするものになります。

カテゴリと性別の組み合わせが勝敗を決する種目です。


この種目はバトンを持たず、タッチによってリレーが行われるのですが、これが想像以上に難易度が高いようで…

1走→2走へのタッチ自体はガイドランナーが行うのですが、二人で走りを合わせながら更に次の走者とタイミングを合わせるという難しさもあります。

また、3走→4走への立位から車椅子へのリレーは、タッチする位置の低さや、車椅子の特徴的なスピード感により、とても難しいそうです。

確かに、車椅子は出だしはゆっくりですがある時点から一気に加速しますし、あっ!と思ってもすぐに止まることが出来ませんからね。

東京パラで初めて知った!という方も多いのではないでしょうか?

私もまだ生で見たことは無いので、いつか見てみたいです!


さてさて、実は他にも面白いリレー種目は沢山ありまして…

数年前から開催されるようになった「世界リレー」という大会は、とびきり変わり種のリレー種目の祭典です。

そのうちの一つ、「混合2×2×400mリレー」

これも字面だけだと意味が分からないんですが、要は男女2人で400mを2回ずつ走るという、ちょっと信じられないくらい過酷なリレーです。

これには800mの選手が起用されることが多いようですが、400mの選手が走ることもあるようです。

チームメイトが速く走って来れば、その分自分の休憩時間は短くなります…。

想像しただけで吐きそうです。笑


もう一つの代わりダネは、「混合シャトルハードルリレー」

シャトルハードル…陸上をされない方にはなじみの薄い言葉かもしれませんが、スポーツテストで「シャトルラン」という往復走をしたことがある方は多いのではないでしょうか。

シャトルハードルは、そこに更にハードルが設置されているということです。

リレーの場合は、女子選手が100mH+10mを走り、次走者の隣のレーンの男子選手は入れ違いでスタートし110mHを走ります。

ハードルを設置することから直線でしか走れないため、バトンパスは水泳におけるリレー種目のように、前の走者がゴールに入った瞬間スタート、という手法が取られます。
普段なかなかリレー種目に出場する機会の無いハードル選手が輝く機会でもあります。

こんな風に、このブログではまだまだ紹介しきれないほど実はいろんなリレー種目があるのです。

恐らく検索すると動画等も見られると思いますので、気になった方は是非調べてみて下さいね!


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青木 沙弥佳
(Aoki Sayaka)

岐阜県岐阜市出身。
中学時に陸上競技を始め、福島大学時に初の日本代表となる世界陸上、そして北京五輪に出場。
専門種目は400m、400mH。
大学卒業後は実業団選手として長く日本のトップで活躍し、2015年に出場した北京世界陸上では4×400mR日本代表メンバーとして日本記録を樹立。
2020年10月に陸上競技を引退し、2021年アクセフコーディネーターに。

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